〔事例〕
Dさん(70歳、男性)は、自宅で妻と二人暮らしで、年金収入で生活している。
ある日、車を運転中に事故に遭い救急搬送された。
医師からは、第4胸髄節まで機能が残存している脊髄損傷(spinal cord injury)と説明を受けた。
Dさんは、入院中に要介護3の認定を受けた。
Dさんは、退院後は自宅で生活することを望んでいた。
妻は一緒に暮らしたいと思うが、Dさんの身体状況を考えると不安を感じていた。
介護支援専門員(ケアマネジャー)は、「退院後は、在宅復帰を目的に、一定の期間、リハビリテーション専門職がいる施設で生活してはどうか」とDさんに提案した。
Dさんは妻と退院後の生活について話し合った結果、一定期間施設に入所して、その間に、自宅の住宅改修を行うことにして、介護支援専門員(ケアマネジャー)に居宅介護住宅改修費について相談した。
Dさんが施設入所してから3か月後、住宅改修を終えた自宅に戻ることになった。
Dさんは自宅での生活を楽しみにしている。
その一方で、不安も抱えていたため、担当の介護福祉士は、理学療法士と作業療法士に相談して、生活上の留意点を記載した冊子を作成して、Dさんに手渡した。
次の記述のうち、冊子の内容として、最も適切なものを1つ選びなさい。
正答5
解説
正解は5です。
胸髄損傷のある人が自宅で生活するうえでの留意点を問う事例問題です。
Dさんは「第4胸髄節まで機能が残存している脊髄損傷」です。
上肢を動かす神経は主に頸髄と第1胸髄から出ています。
そのため第4胸髄まで機能が残っていれば上肢の機能は保たれますが、体幹の下部や下肢の麻痺と、膀胱・直腸の機能障害が生じます。
【選択肢別解説】
1:× スプーンを自助具で手に固定する必要があるのは、手指を動かす機能が失われる頸髄損傷の人です。
上肢の機能が保たれているDさんには必要ありません。
2:× リクライニング式車いすは、座位を保つことが難しい高位の頸髄損傷の人などが使います。
Dさんは上肢で車いすをこげるため、自走用の車いすを使用できます。
3:× エアーマットは、自力で寝返りができない人の褥瘡予防に用いられます。
上肢が使えるDさんには、柔らかく不安定なエアーマットはかえって寝返りや起き上がり、移乗の妨げになります。
4:× ボタンエイドは、手指の細かな動きが難しい人がボタンをかけるための自助具です。
手指の機能が保たれているDさんには必要ありません。
5:○ 胸髄損傷では、膀胱や直腸の機能が障害され、排泄の管理が必要になります。
車いすで使える多機能トイレの場所を事前に確認しておくと、安心して外出できます。
【ポイント】
脊髄損傷では、損傷した高さより下の運動・感覚が障害されます。
頸髄損傷では上肢にも障害が及び、胸髄以下の損傷では上肢の機能が保たれます。
胸髄損傷の人の褥瘡予防は、自分で行う除圧動作(プッシュアップ)や体圧分散マットレスなどで行います。