正答1
解説
正解は1です。
広帯域サウンドスペクトログラムの特徴から、4モーラの無意味語を判定する問題です。
【図の所見】
0.15秒付近から始まる第1音節は、直前にボイスバー(低い周波数の有声の帯)がなく、急に始まっているため、無声の破裂音で始まると読み取れます。
第1音節の母音は、第1フォルマントが約1kHzと高く、第2フォルマントとの間隔が狭いため /a/ です。
0.6秒前後には、0.5kHz以下の低い帯だけが続き、上のフォルマントが弱い区間があります。
これは鼻音のマーマー(鼻腔共鳴)で、/m/ と考えられます。
続く第2音節の母音は、第1フォルマントが約0.3kHzと低く、第2フォルマントが約2.5kHzと高いため /i/ です。
1.0秒から1.2秒には、低い周波数の帯がなく、約3kHz以上に強い雑音が集中する区間があります。
これは無声の歯茎摩擦音 /s/ の特徴です。
続く母音は第1フォルマントが低く、第2フォルマントが中程度の高さにあるため /u/ です。
1.65秒付近には短い途切れがあり、弾き音 /r/ と考えられます。
最後の母音は第1フォルマントが約0.5kHz、第2フォルマントが約2kHzで、/e/ にあたります。
以上から、子音と母音の並びは「t-a、m-i、s-u、r-e」となり、「タミスレ」に一致します。
【選択肢別解説】
1:○ 無声破裂音で始まる /a/、鼻音マーマーの後の /i/、強い高周波の摩擦の後の /u/、短い途切れの後の /e/ という所見がすべて一致します。
2:× 「コニツエ」は第1母音が /o/ で、第1・第2フォルマントがともに低くなります。
図の第1母音は第2フォルマントが高めの /a/ なので一致しません。
3:× 「サリクメ」は語頭が摩擦音 /s/ なので、冒頭に高周波の雑音区間が見えるはずですが、図にはありません。
また第3音節の「ク」は破裂音で、図のような長い摩擦の区間は生じません。
4:× 「トミルネ」は第1母音が /o/ で、図の /a/ と一致しません。
第3音節の「ル」も弾き音で、図の強い摩擦の区間に合いません。
5:× 「ダミシテ」は語頭が有声破裂音 /d/ なので、破裂の前にボイスバーがみられるはずです。
また「シ」の摩擦は「ス」より低い周波数から広く分布し、続く母音は /i/ になるため、図の /u/ と一致しません。
【ポイント】
スペクトログラムでは、まず母音を第1・第2フォルマントの位置で決め、次に子音を判断します。
ボイスバーの有無で有声か無声か、雑音の帯で摩擦音、低い帯だけの区間で鼻音を見分けます。
【用語】
サウンドスペクトログラム:音声の周波数成分が時間とともに変化する様子を、図に表したものである。
広帯域:分析する周波数の幅を広くとる設定で、時間の細かな変化がとらえやすい。
モーラ:日本語の音の長さを数える単位で、拍ともいい、仮名一字がほぼ一モーラに当たる。
ボイスバー:有声の閉鎖区間などでスペクトログラムの低い周波数に現れる帯で、声帯が振動していることを示す。
フォルマント:声道の共鳴によって音声のスペクトルに現れる強い周波数帯で、低い方から第1、第2と呼ぶ。