65歳の男性。
自転車走行中に転倒し、ガードレールで左前胸部を強打した。
呼吸困難となり救急搬送された。
来院時血圧98/64mmHg、脈拍100/分、呼吸回数20/分。
体表面に明らかな外傷はみられない。
来院時の胸部エックス線写真(別冊No.1)を別に示す。
考えられる診断はどれか。
正答2
解説
正解は2です。
前胸部の強打後に呼吸困難をきたした症例で、胸部エックス線写真の所見から診断する問題です。
写真では、左胸郭(写真の向かって右側)の肺野が全体に黒く抜けており、外側には肺の血管影(肺紋理)がほとんど見えません。
左肺は肺門側に向かって縮んでおり、虚脱した肺と胸壁の間に空気がたまっています。
これは胸腔内に空気が入って肺が虚脱した所見であり、外傷による左気胸と考えられます。
【選択肢別解説】
1:× 無気肺は、気管支の閉塞などで肺胞内の空気がなくなり、肺がしぼんだ状態です。
エックス線写真では患部が白く写るため、本症例のように黒く抜けて見えることはありません。
2:○ 気胸では、胸腔に入った空気が黒く写り、その部位には肺紋理がみられません。
本症例の左胸郭の透過性亢進、肺紋理の消失、肺門側に縮んだ左肺は気胸の所見であり、前胸部の強打という受傷機転とも一致します。
3:× 心臓破裂では、心膜腔に血液がたまって心臓が圧迫される心タンポナーデを起こし、血圧低下・頸静脈怒張・心音減弱が現れます。
エックス線写真では心陰影の拡大がみられますが、本症例の主な所見は肺の虚脱です。
4:× 大動脈破裂では、大量出血によるショック、縦隔陰影の拡大、血胸などがみられます。
本症例の写真では縦隔の拡大や胸腔内の液体貯留は目立たず、肺の虚脱が主体です。
【ポイント】
気胸のエックス線所見は、「患側の透過性亢進」「肺紋理の消失」「虚脱した肺の辺縁(臓側胸膜の線)」です。
外傷性気胸は肋骨骨折に合併しやすく、緊張性気胸に進むと縦隔が健側へ偏位して急速にショックに陥るため注意が必要です。