19歳の男性。
2か月前にスノーボード滑走中に右肩を衝いて転倒した。
肩関節の動きは悪かったが放置していた。
症状が一向に改善しないため来所した。
初検時、頸部から肩甲部にかけての自発痛があり、肩関節自動運動は屈曲 90 度、外転 80 度に制限されていた。
両手で壁を押し付けさせる動作をしたところ、図のような現象がみられた。
最も考えられるのはどれか。
正答4
解説
正解は4です。
両手で壁を押させた図では、患側の右肩甲骨の内側縁が胸郭から浮き上がり、背面に翼のように突出しています。
これは翼状肩甲で、肩甲骨を胸郭に押しつける前鋸筋の麻痺を示します。
【選択肢別解説】
1:× 鎖骨不全骨折では翼状肩甲は生じません。
鎖骨骨折では鎖骨部の圧痛や変形が主で、前鋸筋の麻痺は起こりません。
受傷から2か月経って症状が続く点も、不全骨折の経過としては合いません。
2:× 肩関節脱臼では翼状肩甲は典型的ではありません。
脱臼では受傷直後の弾発性固定や肩の変形がみられ、2か月間放置できる状態ではありません。
3:× 棘上筋腱損傷では翼状肩甲は生じません。
棘上筋腱損傷では外転時の疼痛や有痛弧徴候、ドロップアームサインがみられます。
肩甲骨が胸郭から浮き上がる所見は前鋸筋の機能低下によるもので、腱板損傷の特徴ではありません。
4:○ 長胸神経麻痺が最も考えられます。
長胸神経は前鋸筋を支配し、頸部から胸壁の外側を長く走るため、肩を衝く転倒などで牽引されると損傷します。
前鋸筋が麻痺すると、壁を押すときに肩甲骨を胸郭に固定できず、内側縁が浮き上がります。
肩甲骨が安定しないため、肩関節の屈曲・外転も制限されます。
【ポイント】
翼状肩甲は長胸神経麻痺による前鋸筋の麻痺が代表で、壁押し動作で誘発されます。
腕立て伏せの姿勢や上肢前方挙上でも同じ所見が強調されます。