〔事例〕
Kさん(83歳、女性、要介護3)は、10年前の脳出血(cerebral hemorrhage)による後遺症で高次脳機能障害(higher brain dysfunction)がある。
感情のコントロールが難しく、興奮すると大声をあげて怒りだす。
現在は、訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用しながら、自宅で長男(60歳)と二人暮らしをしている。
長男は、会社を3年前に早期退職し、Kさんの介護に専念してきた。
顔色が悪く、介護による疲労を訴えているが、「介護を続けて、母を自宅で看取りたい」と強く希望している。
別居している長女は、長男の様子を心配して、「母親の施設入所の手続きを進めたい」という意向を示している。
訪問介護員(ホームヘルパー)が、興奮しているときのKさんとコミュニケーションをとるための方法として、最も適切なものを1つ選びなさい。
正答5
解説
正解は5です。
感情のコントロールが難しい高次脳機能障害の人が興奮したときの関わり方を問う問題です。
Kさんは脳出血の後遺症で「感情のコントロールが難しく、興奮すると大声をあげて怒りだす」状態であり、社会的行動障害がみられます。
興奮している最中は言葉による説明や説得が届きにくいため、刺激となっている状況から離れて気持ちを切り替えることが有効です。
【選択肢別解説】
1:× 興奮している最中に理由を詳しく聞くと、怒りの原因を思い返させて興奮をさらに強めるおそれがあります。
理由の確認は落ち着いてから行います。
2:× 興奮がよくないと説明しても、感情の抑制が難しいKさんには受け止められません。
責められたと感じて、さらに興奮が強まるおそれがあります。
3:× 冷静になるよう説得するのも、同じ理由で逆効果です。
本人の努力だけで感情を抑えることが難しいのが、この障害の特徴です。
4:× 日課表に沿った活動は、記憶障害などで見通しが立たない人への支援として有効です。
しかし、今まさに興奮している場面で落ち着かせる方法ではありません。
5:○ 場所を移動して話題を変えるのが適切です。
興奮のきっかけとなった刺激から離れ、気分を切り替えることで落ち着きを取り戻しやすくなります。
【ポイント】
高次脳機能障害には、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがあります。
社会的行動障害で興奮したときは、説得よりも環境や話題を変えて「クールダウン」を図ります。