〔事例〕
Dさん(38歳、男性、障害支援区分3)は、1年前に脳梗塞(cerebral infarction)を発症し左片麻痺となった。
後遺症として左同名半盲、失行もみられる。
現在は週3回、居宅介護を利用しながら妻と二人で生活している。
ある日、上着の袖に頭を入れようとしているDさんに介護福祉職が声をかけると、「どうすればよいかわからない」と答えた。
普段は妻がDさんの着替えを手伝っている。
食事はスプーンを使用して自分で食べるが、左側にある食べ物を残すことがある。
Dさんは、「左側が見づらい。動いているものにもすぐに反応ができない」と話した。
最近は、日常生活の中で、少しずつできることが増えてきた。
Dさんは、「人と交流する機会を増やしたい。また、簡単な生産活動ができるようなところに行きたい」と介護福祉職に相談した。
Dさんにみられた失行として、適切なものを1つ選びなさい。
正答3
解説
正解は3です。
失行とは、手足の麻痺や筋力の低下がなく、何をするべきかもわかっているのに、目的に沿った動作ができなくなる状態です。
脳の損傷によって起こる高次脳機能障害の一つです。
Dさんは「上着の袖に頭を入れようとして」おり、「どうすればよいかわからない」と答えています。
これは衣服を正しく着ることができない着衣失行の症状です。
【選択肢別解説】
1:× 構成失行は、図形を描き写したり、積み木を組み立てたりすることができなくなる状態です。
Dさんの症状とは異なります。
2:× 観念失行は、お茶を入れるなど一連の動作の手順や、道具の使い方がわからなくなる状態です。
Dさんの症状は衣服の着方に限られているので、着衣失行が適切です。
3:○ 着衣失行は、衣服の上下や左右、表裏がわからなくなり、正しく着られなくなる状態です。
袖に頭を入れようとするDさんの症状に当たります。
4:× 顔面失行は、指示されても口を開ける、舌を出すなどの顔や口の動作ができなくなる状態です。
Dさんの症状とは異なります。
5:× 観念運動失行は、「さようならと手を振って」など、指示された動作や真似をする動作ができなくなる状態です。
Dさんの症状とは異なります。
【ポイント】
着衣失行は、右大脳半球の損傷(左片麻痺の人)で起こりやすいとされています。
着替えの支援では、衣服の向きをそろえて渡す、手順を一つずつ伝えるなどの工夫をします。