〔事例〕
Aさん(75歳、女性)は、一人暮らしで、身体機能に問題はない。
70歳まで地域の子どもたちに大正琴を教えていた。
認知症(dementia)の進行が疑われて、心配した友人が地域包括支援センターに相談した結果、Aさんは介護老人福祉施設に入所することになった。
入所時のAさんの要介護度は3であった。
入所後、短期目標を、「施設に慣れ、安心して生活する(3か月)」と設定し、計画は順調に進んでいた。
Aさんは施設の大正琴クラブに自ら進んで参加し、演奏したり、ほかの利用者に大正琴を笑顔で教えたりしていた。
ある日、クラブの終了後に、Aさんは部屋に戻らずに、エレベーターの前で立ち止まっていた。
介護職員が声をかけると、Aさんが、「あの子たちが待っているの」と強い口調で言った。
Aさんの状況から支援を見直すことになった。
次の記述のうち、新たな支援の方向性として、最も適切なものを1つ選びなさい。
正答5
解説
正解は5です。
アセスメントの結果を踏まえた、新たな支援の方向性を問う事例問題です。
Aさんは子どもたちに大正琴を教えていた経歴があり、施設でも「ほかの利用者に大正琴を笑顔で教えたりしていた」様子がみられます。
エレベーターの前での「あの子たちが待っているの」という言葉からも、教える役割を求めていると考えられます。
【選択肢別解説】
1:× 事例には、介護職員との関係に問題があったことは書かれていません。
支援の方向性として関係改善を掲げる根拠がありません。
2:× Aさんは「身体機能に問題はない」とされています。
身体機能の改善は、今回の支援の課題ではありません。
3:× Aさんはクラブで自ら進んで演奏しており、演奏できる自信を失っている様子はみられません。
4:× エレベーターの前に座れる環境を整えても、Aさんが求めていることには応えられません。
行動の背景にある思いに目を向けた支援ではありません。
5:○ Aさんの「教えたい」という思いに応えて、施設の中で大正琴を教える役割をもてるようにします。
生きがいと居場所が得られ、「施設に慣れ、安心して生活する」という目標の達成にもつながります。
【ポイント】
認知症の人の支援では、これまでの生活歴や得意なことを生かし、役割をもてるようにすることが大切です。
役割は自信と安心感を生み、行動・心理症状の軽減にもつながります。