AとBとの間で、Aが所有するマンションの1住戸甲(以下、本問において「甲」 という。) についての賃貸借契約が締結され、AはBに甲を引き渡した。
この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
正答4
解説
正解は4。
無断転貸と信頼関係破壊の法理、転貸借と原賃貸借の関係、賃借権譲渡の際の敷金の扱いを問う問題です。
【選択肢別解説】
1:○ 賃借人が無断で転貸しても、賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、賃貸人は解除できません。
いわゆる信頼関係破壊の法理です(民法612条、最判昭和28年9月25日)。
2:○ 承諾のある転貸でも、賃借人Bの債務不履行(賃料不払など)を理由に賃貸借が解除されると、転借人Cは賃貸人Aに転借権を対抗できません。
判例は、賃貸人が転借人に目的物の返還を請求した時に転貸借は履行不能により終了するとしており、本肢はこれを「転借権も消滅する」と表現したものです(最判平成9年2月25日)。
3:○ 賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は賃貸人に対して直接に義務を負います。
たとえばAはCに対して直接賃料を請求できます(民法613条1項)。
4:× 賃借権が承諾を得て譲渡された場合でも、旧賃借人Bが交付した敷金に関する権利義務は、特段の事情がない限り新賃借人Cに承継されません。
敷金は旧賃借人の債務を担保するものであり、当然に新賃借人の債務の担保とするのは旧賃借人に不測の損害を与えるからです。
「当然にCに承継される」とする点が誤りです(最判昭和53年12月22日)。
※現行法では、賃借人が適法に賃借権を譲り渡したときに敷金返還債務が生じることが明文化されています(民法622条の2)。
【ポイント】
賃貸人が交代すると敷金は新賃貸人に承継されるが、賃借人が交代しても敷金は承継されない、という非対称を押さえましょう。