区分所有者Aが、自己所有のマンションの専有部分甲(以下、本問において「甲」 という。) をBに賃貸する場合に関する次の記述のうち、民法、借地借家法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
なお、AB間の賃貸借契約は、定期建物賃貸借契約ではないものとする。
正答1
解説
正解は1。
マンションの専有部分の賃貸借について、賃料増額をしない特約、賃貸人たる地位の移転、中途解約の特約、事務所用途への借地借家法の適用を問う問題です。
【選択肢別解説】
1:○ 建物の賃料が経済事情の変動等により不相当となったときは、当事者は将来に向かって賃料の増減を請求できます。
ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従います。
賃借人に有利な特約なので有効であり、Aはその期間中は増額請求できません(借地借家法32条1項ただし書)。
2:× 建物の引渡しを受けて対抗要件を備えた賃借人がいる建物が譲渡された場合、特段の事情のない限り、賃貸人たる地位は賃借人の承諾なしに当然に譲受人Cに移転します(判例)。
AからBへの通知は地位移転の要件ではないので、「通知しなければ移転しない」とする点が誤りです。
なお、Cが賃貸人の地位をBに主張するには、所有権移転登記を備えていることが必要です。
※現行法では、これらの判例法理が民法605条の2・605条の3として明文化されています。
3:× 建物賃貸人からの解約の申入れは、正当の事由があると認められる場合でなければすることができず、解約の申入れから6か月を経過することで終了します。
この規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは無効なので、Aが正当事由の有無を問わず解約できるとする特約は無効です(借地借家法27条・28条・30条)。
4:× 借地借家法は、建物の賃貸借であれば居住用か事業用かを問わず適用されます。
専ら事務所として使用する目的でも借地借家法が適用されるので、「適用されない」とする点が誤りです(借地借家法1条)。
【ポイント】
「増額しない特約」は有効、「減額しない特約」は無効(賃借人に不利)という非対称を押さえましょう。
賃貸人からの解約には必ず正当事由が必要です。