正答3
解説
正解は3。
不法行為に関する相殺禁止、工作物責任、素因減額、近親者の慰謝料請求権を問う問題です(出題当時の民法による)。
【選択肢別解説】
1:× 出題当時の民法509条が禁じていたのは、加害者が不法行為による損害賠償債権を受働債権として相殺することです。
被害者の側から損害賠償債権を自働債権として相殺することは禁止されていません。
「被害者は相殺をもって対抗することができない」とする点が誤りです。
※現行法では、相殺禁止は悪意による不法行為に基づく債務と、人の生命・身体の侵害による損害賠償債務に限定されています。
2:× 土地工作物責任(民法717条1項)では、第一次的に責任を負う占有者は、損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは免責されます。
しかしその場合に責任を負う所有者は、注意を尽くしていても免責されない無過失責任です。
「占有者及び所有者」が共に免責されるとする点が誤りです。
3:○ 判例は、加害行為と被害者の既往の疾患がともに原因となって損害が発生した場合、加害者に全損害を賠償させるのが公平を失するときは、過失相殺の規定(民法722条2項)を類推適用し、疾患を考慮して賠償額を減額できるとしています(最判平成4年6月25日)。
4:× 他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対して、財産権が侵害されなかった場合でも損害を賠償しなければなりません(民法711条)。
父母は非財産的損害(慰謝料)を請求できるので、「請求できない」とする点が誤りです。
【ポイント】
工作物責任は「占有者は免責あり、所有者は無過失責任」という二段構えです。
既往症による減額は、民法722条2項の「類推適用」による素因減額として押さえておきましょう。