正答1
解説
正解は1。
留置権の成立要件(物と債権との牽連性)と、留置権には物上代位性がないことを問う問題です。
【選択肢別解説】
1:○ 売主Aの売買代金債権は甲に関して生じた債権なので、Aは甲について留置権を有します。
留置権は物権であり、目的物が第三者Cに譲渡された場合でもCに対して主張できます(最判昭和47年11月16日)。
よってAはCからの引渡請求に対して留置権を主張できます。
2:× 物上代位(民法304条)は先取特権の規定であり、質権・抵当権には準用されていますが、留置権には準用されていません。
留置権は目的物を留置して弁済を促す権利にすぎず、優先弁済的効力がないため、火災保険金請求権への物上代位はできません。
3:× 不動産の二重譲渡で第二譲受人Cが先に登記を備えた場合、第一譲受人BのAに対する履行不能による損害賠償請求権は、甲に関して生じた債権とはいえません。
判例は、この場合にBが甲について留置権を主張することを否定しています(最判昭和43年11月21日)。
4:× 造作買取請求権に基づく造作代金債権は、造作に関して生じた債権であって、建物に関して生じた債権ではありません。
判例は、造作代金債権を保全するために建物を留置することはできないとしています(最判昭和29年1月14日)。
なお、建物買取請求権の場合は、建物及びその敷地の留置が認められる点と区別しましょう。
【ポイント】
留置権は「物に関して生じた債権」が必要で、二重譲渡の損害賠償債権や造作代金債権では建物を留置できません。
担保物権のうち物上代位がないのは留置権だけです。