次の記述のうち、判例によれば、適切なものはいくつあるか。
ア特定の専有部分の排水を階下の専有部分の天井裏の枝管を通じて排水する場合、その枝管は、その構造及び設置場所に照らし、専有部分に属しない建物の附属物に当たり、区分所有者全員の共用部分と解される。
イ区分所有者の全員又は管理組合法人が、共同利益背反行為をした賃借人に係る賃貸借契約を解除し、賃借人に対し、当該専有部分の引渡しを求める集会決議をするには、あらかじめ、賃貸人たる区分所有者及び当該賃借人に対し、弁明の機会を与えなければならない。
ウ管理組合は、区分所有者全員の共有に属する敷地につき、一部の区分所有者に係る駐車場専用使用料の増額について、その必要性及び合理性が認められ、かつ、その増額された額が社会通念上相当な額であると認められる場合には、規約又は集会決議をもって、その専用使用権者の承諾を得ることなく増額を決することができる。
エ政党ビラの配布行為は、憲法21条1項で保障されている表現の自由の行使に該当することから、マンションの各住戸のポストへの政党ビラの投函のために各階の廊下等に立ち入る行為が住居侵入罪(刑法130条) に該当することはない。
正答2
解説
正解は2(適切なものはア・ウの二つ)。
区分所有に関する重要判例(排水枝管の帰属、引渡請求と弁明の機会、専用使用料の増額、ビラ配布と住居侵入罪)を問う問題です。
【選択肢別解説】
ア:○ 特定の専有部分からの排水を階下の専有部分の天井裏の枝管を通じて排水する場合、その枝管は構造及び設置場所に照らし、専有部分に属しない建物の附属物に当たり、区分所有者全員の共用部分と解されています(最判平成12年3月21日)。
イ:× 区分所有法60条の占有者に対する引渡請求の集会決議をするには、あらかじめ「占有者(賃借人)」に弁明の機会を与えれば足り、賃貸人である区分所有者に弁明の機会を与える必要はないとされています(最判昭和62年7月17日)。
ウ:○ 駐車場の専用使用料の増額は、その必要性及び合理性が認められ、かつ増額後の額が社会通念上相当な額であるときは、専用使用権者はこれを受忍すべきであり、専用使用権者の承諾を得ることなく規約又は集会決議で増額できるとされています(最判平成10年10月30日)。
エ:× 分譲マンションの各住戸のドアポストに政党ビラを投函する目的で、管理組合の意思に反して共用部分である廊下等に立ち入った行為について、住居侵入罪が成立するとされています(最判平成21年11月30日)。
表現の自由の行使であっても、他人の管理する場所に立ち入ることまで正当化されるわけではありません。
よって適切なものはア・ウの二つです。
【ポイント】
60条の引渡請求で弁明の機会を与えるのは「占有者のみ」、57条~59条の請求で弁明の機会を与えるのは「当該区分所有者」です。
専用使用料の増額は「必要性・合理性+社会通念上相当」なら承諾不要です。