K 病院に勤務する管理栄養士である。
患者は、72歳、男性。
独居。
1か月前から労作時の呼吸苦が出現した。
1週間前から呼吸苦の増強とともに、食欲不振、下痢、下肢の浮腫が加わり、弁膜症による慢性心不全の急性増悪と診断され緊急入院となった。
身長 160 cm、体重 50 kg、BMI 19.5 kg/m 2。
発熱なし。
空腹時の血液検査値は、BNP (脳性ナトリウム利尿ペプチド)840 pg/mL(基準値 18.4 pg/mL 未満) 、LDL コレステロール 98 mg/dL、アルブミン 2.8 g/dL。
eGFR 68 mL/分/1.73 m 2、酸素飽和度 93%。
この患者の消化器症状(下痢)の原因として、最も適切なのはどれか。
1つ選べ。
正答2
解説
正解は2です。
本例は弁膜症による慢性心不全の急性増悪で、BNP が840 pg/mL と著しく上昇しています。
アルブミン2.8 g/dL と低く、下痢と下肢の浮腫があり、発熱はありません。
心不全による腸管のうっ血が、下痢の原因と考えられます。
【選択肢別解説】
1:× 感染性腸炎では、発熱や腹痛を伴うことが多くあります。
本例は発熱がなく、心不全の増悪と同時に下痢が出現しているので、感染性腸炎は考えにくいです。
2:○ 右心系のうっ血により腸管の静脈圧やリンパ管の圧が上がると、腸管からたんぱく質が漏れ出し、下痢が起こります。
低アルブミン血症と浮腫も伴っており、たんぱく漏出性胃腸症が最も考えられます。
3:× バクテリアルトランスロケーションは、腸管の粘膜が萎縮して腸内細菌が体内に侵入する現象です。
長期の絶食などで起こり、敗血症の原因になるもので、本例の下痢の原因ではありません。
4:× 過敏性腸症候群は、器質的な異常がないのにストレスなどで腹痛と便通異常を繰り返す疾患です。
心不全の増悪に伴う下痢や低アルブミン血症は説明できません。
【ポイント】
たんぱく漏出性胃腸症は、腸リンパ管拡張症のほか、うっ血性心不全や収縮性心膜炎などでも起こります。
心不全では、腸管浮腫による消化吸収の低下が食欲不振や低栄養の一因になります。