賃料回収及び明渡しに向けた業務に関する次の記述のうち、不適切なものの組合せはどれか。
ア 明渡しを命じる判決が確定すれば、貸主は、強制執行によることなく、居室内に立ち入り、残置物を処分することができる。
イ 貸主は、契約解除後、借主が任意に明渡すことを承諾している場合、明渡し期限後の残置物の所有権の放棄を内容とする念書を取得すれば、借主が退去した後に残置物があったとしても自らこれを処分することができる。
ウ 貸主は、借主の未払賃料について、支払を命じる判決が確定しなければ、賃料債務の有無及び額が確定しないため、敷金を充当することができない。
エ 貸主は、賃貸借契約書を公正証書で作成した場合であっても、建物の明渡しの強制執行をするためには、訴訟を提起して判決を得なければならない。
正答2
解説
正解は2です。
この問題は不適切な記述の組合せを選びます。
記述別解説の○×は、記述そのものが適切(○)か不適切(×)かを示します。
賃料回収と明渡しの場面での、自力救済の禁止と強制執行のルールを問う問題です。
【記述別解説】
ア:× 明渡し判決が確定しても、貸主が自ら居室に立ち入って残置物を処分することはできません。
判決に基づいて強制執行を申し立て、執行官による明渡しの執行を受ける必要があります。
法的手続によらない実力行使は自力救済として禁止され、不法行為責任を問われるおそれがあります。
イ:○ 借主が任意に明け渡すことを承諾し、残置物の所有権放棄の念書を差し入れている場合です。
この場合、借主の意思に基づくので、退去後の残置物を貸主が処分することができます。
ウ:× 敷金の充当に、判決の確定は必要ありません。
貸主は、借主が債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができます(民法622条の2第2項)。
エ:○ 公正証書で強制執行できるのは、金銭の一定額の支払などを目的とする請求に限られます(民事執行法22条5号)。
建物明渡しは対象外なので、明渡しの強制執行には訴訟を提起して判決を得る必要があります。
不適切なものはアとウなので、正解は2です。
【ポイント】
公正証書(執行証書)は「金銭債権のみ」が強制執行の対象です。
明渡しは判決などの債務名義が必要で、判決後も執行官による手続を経るという流れを押さえましょう。