成人男性共通語(東京方言)話者の発話に対する広帯域サウンドスペクトログラムを図に示す。
A~Eのうち、「あがり」という語の構音上のバリエーションでないのはどれか。
2つ選んでください
正解を2つ選んでください。
正答4・5
解説
正解は4と5です。
この問題は「あがり」の構音上のバリエーションでないものを選ぶので、○ が答えです。
共通語の「あがり」の「が」の子音は、話者や場面によって発音が変わります。
有声軟口蓋破裂音[g]、有声軟口蓋摩擦音[ɣ]、軟口蓋鼻音[ŋ](鼻濁音)は、いずれも「あがり」の変種です。
図のA〜Eは、どれも母音、子音、母音、短い途切れ(弾き音)、母音[i]という流れをもち、2番目の子音の部分が異なります。
【選択肢別解説】
1:× Aは「あがり」の変種です。
最初の母音のあとに強い成分が途切れる閉鎖の区間があり、続いて縦線状の破裂が見られ、そこから次の母音が始まります。
閉鎖と破裂をもつ有声破裂音[g]で発音された「あがり」と読み取れます。
2:× Bは「あがり」の変種です。
最初の母音から次の母音まで声帯振動の縦じまが途切れずに続き、フォルマントがなだらかに移り変わっています。
閉鎖のない有声摩擦音[ɣ]で発音された「あがり」と読み取れます。
3:× Cは「あがり」の変種です。
2番目の子音の部分で高い周波数の成分が弱まり、低い周波数に帯状の成分(鼻音のフォルマント)が残っています。
鼻濁音[ŋ]で発音された「あがり」と読み取れます。
4:○ Dは「あがり」の変種ではありません。
2番目の子音の部分では声帯振動の縦じまが途絶えた無音区間があり、そのあとに破裂が見られます。
声帯振動を伴わない無声破裂音であり、「あかり」のように[k]で発音されたものと考えられます。
5:○ Eは「あがり」の変種ではありません。
2番目の子音の部分に、4kHzを超えて8kHz付近にまで及ぶ不規則な雑音成分が現れています。
これは無声摩擦音の特徴であり、「あさり」のように[s]で発音されたものと考えられます。
【ポイント】
スペクトログラムでは、縦じま(声帯振動)の有無で有声か無声かを判断します。
無音区間と破裂は破裂音、高い周波数の雑音は摩擦音、低い周波数の帯状成分は鼻音の手がかりです。
共通語のガ行子音は、語頭では[g]、語中では[ɣ]や[ŋ]にもなる点が頻出です。
【用語】
広帯域サウンドスペクトログラム:音の周波数成分の時間変化を濃淡で表した図で、広帯域では声帯振動の縦じまが見える。
無声摩擦音:声帯を振動させず、狭めた部分で息を摩擦させて出す音である。
破裂音:口腔内を閉鎖して息をため、それを一気に開放して出す音である。
鼻音:軟口蓋を下げて、息を鼻腔に抜いて出す音の総称である。
鼻濁音:語中のガ行の子音を、軟口蓋鼻音で発音したものを指す。