AB間で、Aの所有するマンション(マンション管理適正化法第2条第1号に規定するものをいう。以下同じ。) の1住戸甲(以下、本問において「甲」 という。) をBに売却する契約(以下、本問において「本件契約」 という。) が締結され、AB間の協議により、BはAに解約手付としての手付金を交付した。
また、本件契約において、Aは、契約締結の日から1か月後に代金と引換えに甲を引き渡すことが約定されていた。
この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
正答2
解説
正解は2。
解約手付による解除の方法(倍額の現実の提供)、解除の相手方が履行に着手しているかどうかの判断、手付解除と損害賠償の関係を問う問題です。
【選択肢別解説】
1:× 売主が手付解除をするには、手付の倍額を「現実に提供」する必要があります。
倍額を償還する旨を通知しただけでは足りず、「通知を送達すれば解除できる」とする点が誤りです(民法557条1項、判例)。
※現行民法557条1項は「倍額を現実に提供して」と明文化しています。
2:○ 手付解除は約定解除権の行使であり、債務不履行による解除ではないので、解除された側は損害賠償を請求できません。
Aが履行に着手していない以上、Bは手付を放棄して解除でき、AはBに損害賠償を請求できません(民法557条2項)。
3:× 手付解除が制限されるのは「相手方」が履行に着手した後です。
Bが代金支払の準備を整えていれば、Bの相手方であるAは解除できませんが、Aは引渡しの準備をしておらず履行に着手していないので、BはなおAに対して手付を放棄して解除できます。
「AとBはいずれも解除できない」とする点が誤りです(民法557条1項、最大判昭和40年11月24日)。
4:× 債務不履行を理由に解除した場合、Bは原状回復として手付金の返還を請求できるうえ、損害があれば損害賠償も請求できます。
解除は損害賠償の請求を妨げないので、「損害賠償を請求することはできない」とする点が誤りです(民法545条)。
【ポイント】
解約手付は「相手方が履行に着手するまで」、買主は放棄・売主は倍額を現実に提供して解除し、損害賠償は発生しない、という型を押さえましょう。