60 歳の男性。
7年前から歩行時にふらつきを自覚し、6年前から話し方が単調で途切れ途切れとなり膀胱直腸障害と起立性低血圧を認めた。
四肢の固縮や振戦が徐々に進行し、2年前から車椅子で移動するようになった。
最近、声が小さくなり呼吸困難感を訴えるようになった。
頭部 MRI の FLAIR 画像で水平断(別冊No. 4 A)及び矢状断(別冊No. 4B)を別に示す。
この疾患で合併する可能性が高いのはどれか。
正答3
解説
正解は3です。
小脳失調(歩行時のふらつき、途切れ途切れの話し方)から始まっています。
さらに自律神経障害(膀胱直腸障害、起立性低血圧)とパーキンソン症状(固縮、振戦)が加わっています。
MRIでは橋と小脳が萎縮しており、矢状断で橋底部が細くなっています。
水平断の橋には十字状の高信号(hot cross bun sign)を思わせる所見があり、多系統萎縮症に典型的な所見です。
以上から多系統萎縮症と考えられ、最近の小声と呼吸困難感は声帯麻痺の出現を疑わせます。
【選択肢別解説】
1:× 失語は大脳皮質の言語野の障害で生じます。
多系統萎縮症は小脳・脳幹・大脳基底核の変性が中心で、失語は通常みられません。
2:× 拮抗失行は、一方の手の動作を他方の手が妨げる現象で、主に脳梁の損傷で生じます。
多系統萎縮症の特徴ではありません。
3:○ 多系統萎縮症では声帯を開く筋が働かなくなる声帯外転麻痺が起こります。
吸気時の喘鳴や睡眠時の呼吸障害を生じ、突然死の原因にもなります。
4:× 下方注視麻痺は進行性核上性麻痺に特徴的な所見です。
多系統萎縮症の特徴ではありません。
5:× 他人の手徴候は、自分の手が意思と無関係に動く現象で、大脳皮質基底核変性症や脳梁の損傷でみられます。
多系統萎縮症の特徴ではありません。
【ポイント】
多系統萎縮症は小脳症状、パーキンソン症状、自律神経障害の3つが組み合わさる疾患です。
声帯外転麻痺による喘鳴や睡眠時無呼吸には、気管切開などの対応が必要になることがあります。