AとBとの間で令和2年7月1日に締結された売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、売買契約締結後、AがBに対し、錯誤による取消しができるものはどれか。
正答3
解説
正解は3です。
2020年4月施行の改正民法95条の錯誤取消しの要件を問う問題です。
動機の錯誤は、その事情が契約の基礎として表示されていたときに限り取り消せます(95条2項)。
表意者に重大な過失があるときは、原則として取り消せません(95条3項)。
例外は、相手方が悪意・重過失のときと、相手方も同じ錯誤に陥っていたときです。
【選択肢別解説】
1:× 表示の錯誤ですが、Aには重大な過失があります。
Bは過失なく信じており、Aの錯誤について悪意でも重過失でもありません。
Bが同じ錯誤に陥っていたわけでもないため、Aは取り消せません(民法95条3項)。
2:× 壺の価値を10万円程度と思い込んだのは、動機の錯誤です。
Aが表示したのは「手元にお金がない」という売却の理由にすぎません。
壺の価値を契約の基礎とした事情として表示していないので、取り消せません(民法95条2項)。
3:○ 贋作だと思い込んだのは動機の錯誤です。
しかし、Aは「贋作であるので」と、その事情を契約の基礎として表示しています。
時価100万円の絵画を10万円で売る錯誤は重要なものであり、Aは取り消せます。
さらにBも同じ錯誤に陥っているので、仮にAに重過失があっても取消しは妨げられません(民法95条3項2号)。
4:× 為替レートの計算違いによる表示の錯誤ですが、Aには重大な過失があります。
Bは善意無過失で、同じ錯誤にも陥っていないため、Aは取り消せません(民法95条3項)。
【ポイント】
改正民法により、錯誤の効果は「無効」から「取消し」に改められました。
重過失の表意者でも、相手方の悪意・重過失か共通錯誤があれば取り消せる点が頻出です。